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  電磁場解析

3.電磁場解析法の種類 
2011年1月8日更新

3.0 電磁場解析法の種類

 電磁場問題を解くことを広く電磁場解析法ということにしますと、その方法はいろいろあります。 もちろん問題を解くのに実験まで含めて言うのは少し範囲を拡げすぎですが、 現実問題を解くには、実験結果も利用することも含めて考えねばなりません。 解析=計算ということで、計算により実験を再現するというのが解析の最終的な目的であると思いがちですが、 工学としての目的は物を制御することにあるので、実験結果の再現だけでは不十分であったりします。 また、この場合、すべての解析が困難な場合は実験との併用で目的を達成したりすることがあります。 

 電磁場解析法に於いてはマックスウェルの方程式が原点なのですが、それ以外のいわゆる経験式(Empirical Formula)を利用することもあります。  特に物性に於いては経験式は欠かせないでしょう。 というか物性の部分は経験式がほとんど・・・かな。

 解析は(モンテカルロ法などを使わない限り)実験と違って、いわゆる計算誤差以外の統計学的誤差はありません。 実験値との差を理論誤差という場合がありますが、元々解く問題を近似したり、プロセスを省略、仮定したのだから、 近似による差あるいは理論による食い違いというべきでしょう。 もちろん、比較するとき実験値の方の実験誤差は考慮しなければなりません。

3.1 理論解析法

 理論解析値(Theoretial Analysis Value)を求める方法です。 理論解析値は、理論式から直接的・間接的に求めます。  計算にコンピュータを利用するしても、電卓的利用から、複雑な積分値の計算まで長時間要するものもあります。  次節以降のシミュレーションと大きく違うのは、初期段階に於いてモデルの離散化というものが無い点です。 空間的には理想的な形状を仮定したり、物性値の分布に平均値的なモノを利用・・・いわゆる集中定数系(0次元:一点モデル)として扱うことが多いのが特長です。  コンピュータによるシミュレーションができなかった時代には、様々な経験式とともに、様々な理論が現実のモデルの近似値として扱われていまいした。 今でも、電気回路と伴に磁場解析を行う場合に利用されます。

 複素数を利用した等角写像
 磁気回路法
 パーミアンス法

3.2 微分方程式法

 コンピュータでシミュレーションとして汎用的な電磁界解析する場合は、マックスウェルの方程式から出発し、それに様々な離散化手法を駆使し、現実問題を解くものです。 離散化の過程でマックスウェルの方程式の微分的表現から出発したものを微分方程式法と呼ばれます。  

3.2.1 有限要素法(FEM)

 微分方程式法の代表格です。 有限要素法は、世界的に学会および産業界でも広く研究・利用され多くの論文や理論が発表されています。 中でも辺要素有限要素法は優れた手法で、市販のプログラムにも採用され多くの実績を実らせています。


3.3 積分方程式法


3.3.1 境界要素法(BEM)

 モデルの表面のみ分割する方法です。 メッシュ分割は簡単で、計算も速いのですが、モデル内部に湧き出し・消滅がある問題は解くことができません。  つまり、同じ物性でも解となる場の関数になるような非線形性がある場合、内部に湧き出し・消滅がありますので適用できないと考えてください。 ただし、積分法ですので重ねあわせがきき、局部的なモデルの解法として利用することができます。 電磁場解析の場合、強磁性体は一般的に B-H曲線を持った非線形性を有しますので、BEMだけで解くのはかなりの近似といえましょう。 それに対して、静電場解析のようなものは、 導体と誘電体(ほとんど非線形性がない)だけですので、かなり有効的に利用できます。

3.3.1 磁気モーメント法(IEM)

 BEMの欠点である非線形性を考慮するため、モデル内部までメッシュ分割する方法です。 弊社ソルバーQmがこの手法に当たります。  BEMの場合もそうでなのですが、この方法を成功させるには、積分法を精度よく、効率良く行う必要があります。 磁気モーメントという呼び名は 磁石などの磁性を示す単純なベクトル的イメージがどうしてもまとい付くのですが、実際の磁性体は細かい磁区が分布しているのであるので そのことを良く考えて、計算モデルを作成する必要があります。 また、渦電流解析は双対原理を使えば(※渦を双極子と考えると磁気双極子の計算はまさしく磁気モーメント法である)、 この手法と統一的に取り扱うことができます。 弊社のQmではこれによって動磁場解析を可能にしました。


3.4 感度解析


3.4.1 逆解析

 これまで述べた解析法はいずれも、いわゆる正解析(Forward計算)つまり、ソースから場を計算する手法でした。 それに対して、特定の場あるいは評価値(レシーバ)から、ソース分布 を求めるという逆解析を求めたいときもあります。 方程式としては、随伴方程式(Ajoint Solution)というものになります。 最適設計には必ず現れる考え方です。 具体的には 荷電粒子のビーム曲げる最適磁場を作る磁石の設計などがあります。

3.4.2 コントリビュートン

 まだ研究例が少ないのですが、ソースとレシーバが決まっているとき、ソースからレシーバへ流れの影響度を、位置の関数として表現することができます。 これを コントリビュートン(Contributon:Contributionではないので注意)といい、小磁性体の位置決定などに使えそうです。 筆者は地雷探査などに利用できるのではないかと考えています。 
参考: Contributon to Modeling of Coronal Magnetic Field


番外 テクノロジーの最終目標?...可制御と役立ち論

 ※この項目は私個人の戯れ言ですので、顔文字満載の乱文です。読まれる方はご注意下さい。m(_ _)m

 私は、テクノロジーの最終目標はモノ(物体・物質・エネルギー)の可制御だと考えています。 これに対して、作った(プログラム等も含め) モノの役立ち論を展開する人がいますが、そのテクノロジーが役に立つかどうかはかなり主観的です。  つまり、役に立つかどうかは、利用側の事情・利用者の能力によって変わってくるものです。  例えば、山奥にコンセントが必要な電気製品を持っていって、役に立たないから電気製品の技術を否定することに似ています。┐( ̄ヘ ̄)┌ ダミダコリャ

 つまり、どんなに優れたテクノロジーであっても、利用者の能力が無かったりなども含めて、利用する環境が整っていなければ役に立たないのです。 俗に言う猫に小判の状態です。・・・これがとても多い。  優秀な部下をうまく使えないどこかの上司とよく似ていますね。<(・・ )( ・・)ゞ キョロキョロ。  それを、役に立たないからといって、そのテクノロジー自体を否定するのは筋違いと言えるでしょう。 

 未来のこと、あるいは、見えている範囲外を100%予測することは不可能ですから、それが役に立つかどうか、 当事者だけで考えてモノを開発するのは、物事の一面しか見ていない偏った見方と言え、後に大きな禍や利益を損なうことになり得ます。  そのとき役に立たなくても、可制御であれば、後に誰かがそれを利用しようと思ったとき役に立つ (場合によっては悪用する)ことができるからです。 しかし、そのことは誰も予測不可能な場合が多いのです。  つまり、役立ち論は「結果論で主観的なものである」ということを肝に銘じておいた方がよさそうです。  ですから、可制御までがテクノロジーの最終目標とした方が、より普遍的な見方といえます。  

 ここで、私の主張を誤解してもらっては困るのですが・・・、上記はテクノロジーの最終目標であって、実際のモノ作りの目標ではありません。  モノ利用する側から見た作る目的(役立たせるかどうかは別)を曖昧にしていいと言っているのではありません。  作る動機はまさに、その主観・役立ちから発せられるものです。  ソフトウェアに限ったことではないのですが、設計段階では「要求定義」をできるだけ具体的にはっきり決めておねばなりません。  「要求定義」は非常に大事です。  これを決めておかなかったり、決めていても利用者と制作者でコンセンサスがとれていなかったりすると必ず大きなトラブルに発展します。  「要求定義」は後に変更されることはあります。 ですから、尚更、はっきり決めておく必要があります。  この世では、開発したモノが利用されなければ広まらないことも事実ですから、本来の目的とする機能は満たされることはもちろんのこと、人間工学的に使いやすい、便利なものを作るべきであるのはいうまでもありません。  「要求定義」や「設計」の変更は、その制作過程で、その「利便性」に問題が生じたとき行われることが多いのです。(目的とする機能まで変えるのは変更ではありません^^;・・・作り直しです。) 特にソフトウェアは「人間工学的に使いやすい」ということが重要ですね。 今のGUIやウィンドウシステムもそれが目的で巨費を投じて作られてきましたから・・・

 「要求定義」を満たせば、役立つはずです。 作ったのに役に立たないのは、要求定義を満たしていないのか、要求定義が曖昧とかで欠陥があったからです。 (言い換えれば、前者は、製造過程での欠陥で、後者は、要求定義自体の精度が品質に影響した設計段階での欠陥ということです。) 勢い「可制御」である範囲を拡げれば(オーバースペックなど)要求を満たしやすいのですが、これも、本末転倒で、要求定義の作り直しから始めないと泥沼にはまります。

 一般的に学問的研究の目的を言う場合、前者のテクノロジーの最終目的を指すことが多いようです。  それに対して、一般社会の技術利用の目的は後者の モノ作りの目標になっていると思います。 私は工学部出身ですが、 工学部は理学部と違い役に立つものを研究しなければならない・・・とよく言われました。 福沢諭吉さんが言う実学のことを指しているのだと思いますが、しかし、どこかで、 引っかかるものを感じていました。 (諭吉さんの時代は富国強兵策でしたので その背景が色濃かっただと思います。) それは、学問的研究にモノ作りの目標が混じっていたからでしょう。

 このジレンマは、SF映画などにも良く根底のテーマとしてもよく使われていると思います。 時代にそぐわない優れたテクノロジーが 研究者の思いもつかぬものに利用(悪用)されて、悲劇を招くという筋書きです。

 前者を科学と後者を技術という構図で考えてみましたが、あまりにも身近な言葉なので、 その意味は余計にわからなくなります。 両者は、対立するものでもなくむしろ親和性が高いものですから、普段は混同しても差し支えないのですが、ここぞと言うときには 違いをはっきり区別しておくべきでしょう。 特に、今流行の役立ち論は「結果論で主観的なものである」ということを・・・くれぐれもご都合主義に流されないよう注意いたしましょう。

 希に、誰もが役立たないと思ってしたモノに、優れた利用方法を見つける賢人がいますが、このような人は特別で、私を含めた凡人はコツコツと目の前の身近な目標に向かって進むしかないです。

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